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柿沼守利作品集

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氏初の本格的な作品集『柿沼守利作品集』が刊行され、これまで雑誌でも十分に紹介されてこなかった作品やプロダクト、詳細図などがまとめて収録されています。
同書には、堀部安嗣氏との対談や随筆も含まれ、白井事務所時代から九州での独立後の歩みまでを通して、柿沼建築の背景や思考を読み解く資料として位置づけられています。

以下に氏の紹介をざっとまとめます。

柿沼守利(かきぬま・しゅり)氏は、白井晟一の薫陶を受けて独立し、九州を中心に住宅・寺院・老舗旅館の改修などを手がけてきた日本の建築家です。

略歴とキャリア

1943年東京都生まれ。
1960年代後半から白井晟一に師事し、「虚白庵(白井自邸)」や「親和銀行本店」「渋谷区立松濤美術館」など白井の主要プロジェクトに深く関わったとされています。
白井晟一の逝去後、1980年代半ばに独立し「柿沼守利研究室」を設立、以後主に九州で設計活動を継続してきました。

代表作と仕事の領域

個人住宅:「香住ヶ丘の舎」「輝国の家(井上邸)」など、時間とともに深まる居住空間を重視した住宅作品が評価されています。
宗教建築:福岡の「光圓寺」など、静謐で重心の低いプロポーションと素材感を生かした寺院建築が知られています。
旅館・商業施設:佐賀・唐津の老舗旅館「洋々閣」や由布院「亀の井別荘」の改修、「チャイナ・オン・ザ・パーク 忠次館」など、既存建物や地域文化を尊重した改修・増築を多数手がけています。

作風と設計思想

素材の活かし方
木・鉄・コンクリートなど異なる素材の特性を丁寧に読み取り、職人技を引き出すようなディテールで組み合わせる点が特徴とされています。
原寸で描かれた詳細図やスケッチからも、納まりと質感に対する執着が読み取れると紹介されています。
佇まいと空間性
白井晟一ゆずりの重厚で内省的な空気を保ちながら、敷地や風景に馴染む「品格ある佇まい」として評価されています。
住宅から寺院、旅館まで一貫して、光の取り込み方や動線の組み立てによって、静けさと緊張感を共存させる空間構成が見られるとされています。

掲載されていた文言の中で、2か所覚書を以下に転記しておきます。

「試作小住宅」1953年
            
戦後の物資の不十分な時代につくられた住宅。材料は建主の郷里から送られたスギ材を構造材に用いて、ラワン材を建具・造作材に用いている。白井は設計のメモにこう記したという。
「かつての民家にはこういう形式が多かった。白い漆喰壁とくすんだ木部との階調は、新旧を超えて素朴な故郷の感覚であると思われる。この《システム》は構造的にも、意匠的にも充分近代建築の激しい陶冶(とうや)の対象となり得ると考えられる。」『現代建築家全集9 白井晟一』1970年、三一書房より引用
            

私の敬愛するカイ・フランク先生は『フィンランド・デザイン界の良心』と言われて久しい。

氏の作品はひと目でそれと判るほど個性的で美しい。器のもつフォルムが氏特有のものであるからに他ならない。軽快でシンプルな線の流れは品を備え、かつあたたかみがあり「かたち」として普遍性をもつ。1984年に誕生したキルタ・シリーズは現在もティーマとして販売されていて、ロングセラーを続ける。

二つの引用は、個人的な古民家視点からすると、すんなり受け入れられる観点であることは明白です。そこには既に素材が自然に持っている能力を享受させていただくことで、そのものが光り輝く共同作業になっていくということだと思います。人間が支配しようというデザインがあまりにも多い現状へのアンチテーゼになり得ます。

作品集としては、白井晟一、吉村順三、堀部安嗣各氏の作品や作風を好まれる方は手元に置かれても良いかもしれません。

ではまた。

About Me
Sofu.
Sofu.
古民家整備士 / KOMINKA Restorer
長年空き家だった古民家に移住し、簡素で豊かな生活を模索しています。DIYやその他日常作業の気づきやノウハウをアーカイブしていくブログです。適度に本質的かつ良質なものを、既にそこにあるものを用いて調和するよう心がけていきます。
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